COLUMNコラム
化粧品の使用感調査で売れる商品を作る|最適な調査手法とアンケート設計
化粧品の使用感調査とは?
化粧品の使用感調査とは、一般消費者(モニター)に実際にテスト品を使用してもらい、その使い心地や香り、容器の使いやすさ、肌へのなじみ方などを評価してもらう調査のことです。専門用語では「ユーザビリティテスト」や、自宅で試してもらう形式を指して「HUT(Home Use Test)」と呼ばれることもあります。
化粧品は食品と同様に、個人の嗜好や肌質によって評価が大きく分かれる商材です。「しっとりしている」という表現一つをとっても、乾燥肌の人にとっては「潤いが足りない」と感じられ、脂性肌の人にとっては「ベタつく」と感じられることがあります。
こうした主観的な感覚を、統計的なデータとして客観視するために行われるのが使用感調査です。研究室での機器測定データ(物性データ)と、消費者による官能評価データ(感性データ)を掛け合わせることで、より市場ニーズに即した商品開発が可能になります。
使用感調査を実施する3つの目的
なぜ一般消費者に使用テストを依頼する必要があるのでしょうか。ここでは、企業が使用感調査を行う主な3つの目的について解説します。
新商品の受容性確認(発売前)
最も一般的な目的は、新商品発売前の最終確認です。ターゲットとなる層(例:30代後半、乾燥肌の女性など)に試作品を使ってもらい、「この使用感なら買いたいと思うか」「価格に見合った価値を感じるか」を検証します。
開発チーム内では「画期的なテクスチャーだ」と評価されていても、実際の消費者がいつものスキンケア手順の中で使用した際に、違和感を覚えることは少なくありません。発売前にネガティブな要素を潰し、パッケージの訴求内容と実際の使用感にギャップがないかを確認するために不可欠なプロセスです。
競合製品との比較(ベンチマーク調査)
自社製品の立ち位置を明確にするために、競合他社の人気商品と同時に評価してもらう手法です。これを「ブラインドテスト(ブランド名を隠して行うテスト)」で行うことで、ブランドイメージに左右されない純粋な「中身」の実力を測ることができます。
「競合A社の商品よりも保湿感は高いが、浸透スピードは劣っている」といった具体的な強み・弱みが明確になれば、販促時のキャッチコピーや営業トークの根拠として活用できます。
既存商品のリニューアルに向けた課題抽出
ロングセラー商品であっても、時代の変化とともに消費者の好みは変わります。「最近売上が落ちてきたが、原因がわからない」といった場合、既存商品の使用感調査を行うことで、現在のトレンドとのズレを発見できます。
例えば、「昔は濃厚なクリームが好まれたが、今はマスク生活の影響でサラッとした仕上がりが好まれている」といったインサイトが得られれば、リニューアルの方向性を正しく定めることができます。
具体的な調査手法と流れ
化粧品の使用感調査には、大きく分けて3つの手法があります。調査の目的や予算、確認したいポイントに合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。
ホームユーステスト(HUT)
ホームユーステスト(Home Use Test)は、テスト品をモニターの自宅に郵送し、普段の生活環境の中で一定期間使用してもらう調査方法です。化粧品の使用感調査において最も一般的に利用されます。
- メリット:実際に洗面台や浴室など、普段使用する環境で試してもらえるため、リアルな評価が得られます。また、「3日間使用後の肌の変化」や「使い切るまでの容器の使い勝手」など、継続使用による評価が可能です。
- デメリット:モニターが正しく使用方法を守っているか管理しにくい点や、郵送コスト・期間がかかる点が挙げられます。
会場調査(CLT)
会場調査(Central Location Test)は、指定した会場にモニターを集め、その場で商品を使用してもらい評価を得る方法です。ハンドクリームやメイクアップ商品、香りの評価など、その場での第一印象を重視する場合に適しています。
- メリット:照明や温度などの条件を統一できるため、データの比較がしやすいです。また、機密性の高い発売前の新商品でも、回収漏れのリスクを抑えて調査できます。
- デメリット:自宅での使用とは環境が異なるため、リラックスした状態での評価や、継続使用による効果測定はできません。
定性調査(グループインタビュー・デプスインタビュー)
定量的なアンケート数値だけでなく、「なぜそう感じたのか」という深い心理を探るために行います。HUTで商品を試してもらった後に、数名を対象にインタビューを行うケースが多いです。
- メリット:「ベタつくと感じたのは、塗った直後ですか?それとも翌朝ですか?」「その感触を他の言葉で例えると何ですか?」など、選択肢では表現しきれない微妙なニュアンスや、開発者も気づかなかった意外な着眼点を発見できます。
- デメリット:定性的なデータであるため、市場全体の傾向として数値化することはできません。定量調査と組み合わせて行うのが理想的です。
調査票設計の重要ポイント
官能評価の言語化と尺度設定
化粧品の使用感は感覚的なものです。これを客観的なデータにするためには、評価項目を細分化し、適切な尺度を設定する必要があります。
例えば「香り」について聞く場合、「好き・嫌い」だけでなく、以下のように分解します。
- 強さ:強すぎる ~ 弱すぎる
- 持続性:残りすぎる ~ すぐ消える
- 質:人工的 ~ 自然
また、テクスチャーの評価においても、「しっとり感」「伸びの良さ」「浸透感」「べたつきのなさ」「仕上がりのハリ感」など、商品特性に合わせた項目を用意します。一般的に、5段階または7段階のSD法(Semantic Differential scale)を用いて、「非常にそう思う」から「全くそう思わない」までの度合いを測定します。
使用期間と評価タイミングの設計
「いつ評価してもらうか」も重要です。化粧品の場合、以下の3つのタイミングで評価が変わることがよくあります。
1. 使用直後(テクスチャー、香り、浸透感)
2.数時間後(保湿の持続性、化粧崩れの有無)
3.翌朝または1週間後(肌質の変化、実効感)
調査票では、これらのタイミングを明確に区切って質問する必要があります。「全体的な満足度」を問う前に、各プロセスの評価を聞くことで、どの段階でユーザーの期待を裏切っているのかを特定できます。
調査を成功させるための注意点
化粧品の使用感調査を実施する際には、特有のリスク管理と法令遵守が求められます。
まず、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)への配慮です。調査段階であっても、効果効能を過大に謳ってモニターを募集したり、誘導的な質問で効果を断定させるような調査票を作成することは避けるべきです。また、未承認の成分を含むテスト品を使用する場合は、安全性試験をクリアしていることが大前提となります。
参考:令和7年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について
次に、副作用(肌トラブル)への対応フローの構築です。モニターから「肌がかぶれた」「赤みが出た」という連絡があった場合、直ちに使用を中止させ、必要に応じて医療機関への受診を案内する体制を整えておく必要があります。調査会社を利用する場合は、こうしたトラブル対応マニュアルが整備されているかを確認しましょう。
最後に、ターゲット選定の厳密さです。「30代女性」という大雑把な括りではなく、「乾燥肌に悩んでおり、普段デパートコスメを使用している層」など、ペルソナに近い層をリクルーティングしなければ、調査結果の精度は著しく低下します。
調査会社に依頼するメリット
自社で社員や知人を集めて調査を行うことも可能ですが、本格的な商品開発においては、専門の調査会社に依頼することが一般的です。その理由は主に3つあります。
1.バイアスのない客観的なデータが得られる 社内関係者や取引先では、どうしても「気を使った回答」になりがちです。第三者である調査会社を通すことで、モニターは匿名性が守られ、忌憚のない正直な意見を出しやすくなります。
2.ターゲットリクルーティングの精度 調査会社は数十万〜数百万人規模のモニターパネルを保有しています。「週に3回以上シートマスクを使用している人」や「特定のブランドから乗り換えを検討している人」など、条件を絞り込んだスクリーニングが可能です。
3.複雑な物流・回収業務の代行 HUT(ホームユーステスト)では、数百個のテスト品を梱包・発送し、使用後のアンケートを回収・集計するという膨大な事務作業が発生します。調査会社に一任することで、担当者はデータ分析と商品改良の意思決定に集中できます。
私たちRJCリサーチのような専門機関では、調査設計の段階からサポートを行い、貴社の課題解決に最適なプランをご提案しています。
まとめ
化粧品の使用感調査は、開発者の「想い」と消費者の「実感」のズレを埋めるための重要な工程です。成功させるためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 目的の明確化:受容性確認か、競合比較か、リニューアルか。
- 適切な手法の選択:自宅でじっくり試すHUTか、会場で第一印象を見るCLTか。
- 調査票の工夫:感覚を細分化し、使用タイミングごとに評価を取得する。
- リスク管理:薬機法遵守と肌トラブルへの対応体制。
これらを自社だけで完結させるのはリソース的にもノウハウ的にもハードルが高いものです。確実なデータを得て、売れる商品を作るために、ぜひプロフェッショナルの力を活用してください。
市場調査の目的に合わせた最適な調査設計をご提案します。 まずは無料相談をご活用ください。
よくある質問(FAQ)
Q:化粧品の使用感調査にはどのくらいの期間が必要ですか?
A:調査手法によりますが、ホームユーステスト(HUT)の場合、準備から実査、集計・分析まで含めて、一般的に1.5ヶ月〜2ヶ月程度かかります。使用期間(1週間〜1ヶ月)によっても変動しますので、開発スケジュールに合わせて早めにご相談ください。
Q:HUTを実施する場合、サンプル数はどのくらい必要ですか?
A:統計的な信頼性を確保するためには、1セル(1つの分析単位)あたり最低でも100サンプル以上が推奨されます。年代別や肌質別に分析したい場合は、さらにサンプル数を増やす必要があります。
Q:発売前の商品情報の漏洩が心配です。対策はありますか?
A:調査会社では、モニターに対して守秘義務契約を結び、SNSへの投稿禁止などを厳格に管理します。また、商品パッケージを無地のものにする「ブラインドテスト」を行うことで、ブランドや商品名の特定を防ぐことも可能です。
Q:調査票の作成から手伝ってもらえますか?
A:はい、可能です。調査の目的(何を知りたいか)をヒアリングさせていただき、消費者の本音を引き出すための設問設計や尺度の設定など、プロの視点で調査票を作成いたします。
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